13.閑話 森羅の夢とジールの白昼夢
☆☆森羅の見ていた夢。。。☆☆
みんな美形揃いの美男美女ばっかだよな。。。
でも、黒薔薇女王さまって、ほんと可哀想!
何でも、黒薔薇女王の美しさを妬んだ魔女が、魔法で女王に
髭を生やしたらしい。
何とかしてあげたいけど、わたしはベルナルド工房で働く一介の
鍛冶職人、それもまだ見習いの弟子に過ぎないし なぁ……。
黒薔薇女王を救う手立て……んーーーー、
あっ、いいこと思いついたぞ!
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師匠のマイクに頼んで、ショートソードを半分の大きさにした物を
作って貰い、今は、それを懐に隠し、女王に謁見を賜っ た所だ。
「それで、おまえが、妾のこれを何とかできると申すのか?」
そう言って女王は、手に広げ持つ扇を前後に動かし、口元を覆い隠す
黒いモシャモシャを扇の風で揺らしてみせた。
わたしは、内心すごく驚いたが、ぐっと堪えて真面目な表情を
崩さないように頑張った。
「はい。わたくし、ナギシンラが、女王様を苦しめる魔女の呪いを解いて
みせます! では、失礼致して、
行きます!!………アイム、ソーリー…ヒゲ…ソーリー……。」
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女王の黒髭は、見事切り落とされ、謁見の間の床に散らばり、真っ黒
な小高い毛の山ができた。
「見事よのー。 誰も決して切ることのできなかったものなのに……所で、
おまえの手にしたそれは……?」
「はい、ベルナルド工房のマイク・ベルナルド師匠が手懸けましたショート・
ショート・ソード、その名も《切れてない〜!》で、ございます。」
「はて? 切れているのに切れてないとは?」
「はい、女王様の美しいお顔は無傷でございます。即ち、女神のような
玉肌まったく切れずにいたかと思いますがー。」
「はっ、は、は、はー! おまえも口が立つヤツじゃのう、
気に入った! 金貨七千枚をそなたに進ぜようぞ。」
「有り難き幸せ……アイム、ソーリー…ヒゲ…ソーリー……。」
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★★ジールの白昼夢★★
―――ジールは、椅子に腰掛けこれからの算段をが考えたていた。
聖者といっても、彼はまだ子供……わたしがしっかり教育しないと…
見たところ、聖者は、男児としての素養に欠けるし、下手したら少女だと
誤解を受け兼ねないと憂慮される。
そうなれば、不埒な輩が彼の品位を落とすような暴挙に出るやもしれない。
これは、由々しき問題だ!
*** ***
―――『おやめ下さい。そのようなこと……お放し下さい!』
『可愛いそなたの頼みでも、それは聞けないと言うものだ。』
『いいえ、お聞き下さい。 わたくしは、このシュウダシャール国に遣わされ
たイリオークの御霊を持つ聖者です。』
『この儂が何も知らないとでも、お思いか! イリオークの御霊を持つ聖者
とは、……男……即ち、そなたでは在り得ないのだ。』
『わたくしは男です。』
『何を仰せかと思えばそのような戯言を!儂の目は節穴ではござらぬ。』
『わたくしは、あなたさまの遊び女ではありませぬ。人を呼びますよ!!』
『ハッ、ハッ、ハッ、ハー! 笑わせくれるわ。今、この神殿には誰もおらぬ。
そなたが、礼拝に来ることは、事前に調べてあってのぉ、神官長を始め皆に
は嘘の言伝を聞かせ、そなたが急遽、礼拝は取りやめて国王陛下のもとへと
行ったことになっておるわ。 だから、皆今日は、そなたの相手をせずに良い
と自室に籠もっておってのぉ、この地下の礼拝堂までは、誰も降りては来ぬ
わ! 叫ぼうが泣き喚こうが、痛くも痒くもないわ。ワァー、ハ、ハ、ハッ!』
―――ジールは、自分の想像した状況に鼻息荒く憤慨し、一気に興奮状態
に陥ったのだった。
『聖者さまの貞節は、このわたしが守らねば!』
彼はそう固く心に誓い、頭の後ろで組んでいた両手を外して拳を作り、
勝ちどきを上げるようにその両拳を高く掲げたのだった。